移動手段として利用するタクシー。インボイス制度開始後、タクシー代の取扱いはどうなるのでしょうか?


― M社 ―
M社経理部まいと顧問税理士が、打ち合わせをしています。

部長から、インボイス制度開始後の業務フローを整理するようにいわれていて、今やっているのですが…。

そうでしたね。

タクシー代は、どうしたらよいのでしょうか?

どうしたら、といいますと?

タクシー代って、そもそもインボイスは必要ですか?
移動手段ですから、鉄道と一緒ですよね?

確かに、移動手段としては同じ括りになりますが、インボイス制度上、公共交通機関としての鉄道と、そうではないタクシーは別の取扱いです。
つまり、公共交通機関としての鉄道料金は、3万円未満であればインボイスは不要ですが、タクシー代は基本的に料金がいくらかに関わらずインボイスは必要です。

出た、“基本的に”。
例外とか、あるのですか?

例外といいますか…。
まず、一定規模以下の事業者に該当する場合、2023年10月1日から6年間、税込み1万円未満のタクシー代であれば、通常の記載要件を満たした帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。つまり、インボイスが不要、となります。
この場合の“一定規模以下”とは、個人は前々年、法人は2期前を指す“基準期間”の課税売上高が1億円以下、又は個人は前年1月から6月の期間、法人は前期開始から6ヶ月間を指す“特定期間”の課税売上高が5千万円以下の場合です。
御社はいずれにも該当しませんので、この規定は適用できません。

適用できない話を初めにされても…。

申し訳ありません。大人の事情がありまして…。
次に、出張時に利用したタクシー代について、旅費規程等に基づき従業員等へ精算する場合は、通常の記載事項に加えて「出張旅費等特例」など一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。通勤手当と同様の帳簿処理、と思っていただければと思います。

ああ、例の“出張旅費等特例”、ですね?

はい。
そして最後に、インボイスに該当しない領収書であっても、現状の区分記載請求書等に該当する領収書であれば、経過措置として、2023年10月1日から3年間は80%を、その後の3年間は50%を仕入税額控除できます。この場合は、この領収書とともに、通常の記載事項に加えて「80%控除対象」など一定の事項を記載した帳簿の保存が必要です。

えーっと…。
ざっくりとまとめると、弊社の場合、原則、インボイスが必要。ただし、出張精算であれば、インボイス不要。たとえインボイスでなくとも、現状の領収書であれば、当分の間は、多少控除してもらえる。
あとは、それぞれの帳簿の記載に気をつける。このような感じですね?

はい。ご理解のとおりです。
一点付け加えるとするのならば、タクシー代のインボイスは、いわゆる“簡易インボイス”でよいので、領収書の宛名がなくても大丈夫ですよ。

いやいや、もうお腹いっぱいです。

(苦笑)
簡易インボイスの詳細は、記載事項の例がある国税庁のQ&Aなどを参考になさるとよいと思います。

そうします。
一度まとめますので、確認してもらえますか?

承知いたしました。

よろしくお願いします。
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